下古寺天満天神社。比企郡小川町下古寺の神社

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下古寺天満天神社。比企郡小川町下古寺の神社

下古寺天満天神社の概要

下古寺天満天神社は、比企郡小川町下古寺にある神社です。下古寺天満天神社は、役小角が八大竜王の啓示により八大龍王を祀り竜王寺(梅松院)を当地に開創、その後無筆の僧侶知海が当寺で天満宮より筆意を授かったことから、天満宮を奉斎した伝えられます(「比企郡古寺梅松院記」)。僧侶知海は、その後松山城主上田能登守の嫡子上野介の手跡指南役として師事したと伝わることから、その奉斎は戦国時代末期頃とされます。江戸期には下古寺村の鎮守として祀られ、明治維新後の社格制定に際し村社に列格していました。

下古寺天満天神社
下古寺天満天神社の概要
社号 天満天神社
祭神 菅原道真公、八大龍王
相殿 -
境内社 八坂神社
祭日 例大祭10月15日、八坂祭7月15日
住所 比企郡小川町下古寺167
備考 -



下古寺天満天神社の由緒

下古寺天満天神社は、役小角が八大竜王の啓示により八大龍王を祀り竜王寺(梅松院)を当地に開創、その後無筆の僧侶知海が当寺で天満宮より筆意を授かったことから、天満宮を奉斎した伝えられます(「比企郡古寺梅松院記」)。僧侶知海は、その後松山城主上田能登守の嫡子上野介の手跡指南役として師事したと伝わることから、その奉斎は戦国時代末期頃とされます。江戸期には下古寺村の鎮守として祀られ、明治維新後の社格制定に際し村社に列格していました。竜王寺(梅松院)は、当社鳥居下にありましたが、明治維新後の神仏分離に際し、(修験宗廃宗とされたため)廃寺となっています。

新編武蔵風土記稿による下古寺天満天神社の由緒

(下古寺村)
天神社
村の鎮守なり、
別當梅松院
本山修驗、京都聖護院の末、梅林山龍王寺と號す、開山の僧を智海と云、本尊不動を安ず、智證大師の作と云、客殿の後に釋延救が千日の護摩を執行し、斷食して入定せしと云跡あり、又平村慈光寺の傳へには、此人慈光山にて入定せしといへり、猶慈光寺の條合せみるべし、
天神社。八大龍王を合祀す、(新編武蔵風土記稿より)

「小川町の歴史別編民俗編」による下古寺天満天神社の由緒

天満天神社(下古寺一六七)
下古寺の天満天神社は、菅原道真公を祀ることから、学問を授け給う尊神として尊崇されており、特に入学・進学の際には天満宮に祈願礼拝すれば大願成就するといわれている。また、併せ祀られている八大龍王は、雨乞いに霊験があるとして信仰されてきた。
この天満天神社のそばには、明治初年まで梅松院と称する本山派修験の寺院があった。今では寺は跡形もないが、寺伝の「比企郡古寺梅松院記」(『埼玉叢書」所収)によれば、梅松院は梅林山龍王寺と号し、水を得るため古寺鍾乳洞に籠って人大龍王の霊験を得た役行者が、自ら龍王の像を彫刻して祀った草庵に始まり、霊場としてしばしば行者の訪れるところとなっていたという。
こうした行者の一人であった智海専戒という無筆の僧が、この地において天満天神から筆道を授かり、能書家となったことから、その思に報いんと一社を建立して八大龍王と共に天満天神を祀ったのが、天満天神社の創始とされる。智海はその後、松山城主上田能登守の嫡子上野介の書道の指南をするまでになり、文永五年(一二六八)二月十五日に没したと伝えられている。(「小川町の歴史別編民俗編」より)

「埼玉の神社」による下古寺天満天神社の由緒

天満天神社<小川町下古寺一六七(下古寺字坂下)>
「比企郡古寺梅松院記」(『埼玉叢書』所収)には、竜王寺と当社の創建について次のように記されている。その昔、役小角が武蔵国を訪れた時、都幾山を開いたものの山中に水が一滴もなかったため、岩窟に籠もって水神にこの由を祈ったところ、八大竜王が現れて小角に五か所の霊水を賜った。そこで、小角は竜王の尊像を一刀三礼に彫刻し、岩窟の近くに竜王寺と号する一寺を建てたが、当時、この辺りには人家もなく、寺号を知る人も希であったため、ただ「都幾山の北に古寺がある」と伝えられるだけになってしまった。それが、古寺の名の起こりである。
ここに、無筆であることを嘆いて長年筆道を天満宮に祈念していた知海という顕密禅兼学の僧がいた。ある夜、天満宮が寺の梅林に影向し、永の字を書いて知海に授け、やがて知海は筆意を得て、能書家として知られるようになった。そこで、知海は報賽として天満宮の尊体を一刀再拝に彫り、竜王と天満宮を相殿に祀った一社を建立し、朝暮勤行を怠ることがなかった。知海は、その後、松山城主上田能登守から嫡子上野介の手跡指南役を仰せ付けられるに至ったという。
以上が、「比企郡古寺梅松院記」の要約である。この末尾には、「元文元年(一七三六)八月吉日写」とある。(「埼玉の神社」より)


下古寺天満天神社の周辺図


参考資料

  • 「新編武蔵風土記稿」
  • 「小川町の歴史別編民俗編」
  • 「埼玉の神社」(埼玉県神社庁)