真名板薬師堂。行田市真名板にある名所旧跡

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真名板薬師堂。旧真言宗薬王山花蔵院の御堂

真名板薬師堂の概要

真名板薬師堂は、行田市真名板にある名所旧跡です。真名板薬師堂は、発見された板碑によると延宝7年(1679)から天和2年(1682)の4年間をかけて建立したといい、当時は真言宗薬王山花蔵院の堂宇であったといいます。花蔵院の創建年代は不詳ですが、親鸞聖人の弟子沙弥西念が建立したという碑文がかつてはあったといい、残されている板石塔婆に建治元年(1275)の銘が残されていることからも鎌倉時代に寺院が存在していたことが伺えます。明治維新により花蔵院は廃寺、その後花蔵院堂宇は焼失してしまい、薬師堂と仁王門のみが残ったといいます。

真名板薬師堂
真名板薬師堂の概要
名称 薬師堂
見どころ 山門、薬師堂、公孫樹
入場時間 -
入場料 無料
住所 行田市真名板、真名板集会所地
備考 高山古墳隣接



真名板薬師堂の由来

真名板薬師堂は、発見された板碑によると延宝7年(1679)から天和2年(1682)の4年間をかけて建立したといい、当時は真言宗薬王山花蔵院の堂宇であったといいます。花蔵院の創建年代は不詳ですが、親鸞聖人の弟子沙弥西念が建立したという碑文がかつてはあったといい、残されている板石塔婆に建治元年(1275)の銘が残されていることからも鎌倉時代に寺院が存在していたことが伺えます。明治維新により花蔵院は廃寺、その後花蔵院堂宇は焼失してしまい、薬師堂と仁王門のみが残ったといいます。

新編武蔵風土記稿による真名板薬師堂の由来

(上真名板村・下真名板村)花蔵院
新義、上ノ村一乗院末、薬王山と号す。本尊不動を安ず。
薬師堂。此堂の傍に親鸞上人の弟子、沙弥西念と云ものの建しと云碑あり。図左に出す。
右志者奉為過住 主君幽儀滅罪生善
尽法界群類平等 利益仍造立如件
沙弥西念敬白(新編武蔵風土記稿より)


真名板薬師堂所蔵の文化財

  • 銅造伝薬師如来立像(埼玉県指定文化財)
  • 板石塔婆(行田市指定文化財)
  • 真名板薬師堂の公孫樹(行田市指定文化財)

銅造伝薬師如来立像

像が安置されているこの薬師堂は、江戸時代にこの土地にあった花蔵院という寺院の境内にあって、その差配を受けていた堂であったといわれています(「新編武蔵風土記稿」)。花蔵院は明治時代初期に廃寺となり、現在は薬師堂のみが残り、この像は両手先が失われていることから「手なし薬師」として地域の信仰を集めています。
像の制作時期は鎌管時代後期であり、この時期の金剛仏は全体的に小作りなものが多い中で94㎝もの像高を持つ像は珍しいものといえます。また薬師堂の近くには、この像とほぼ同じ時期にあたる「建治元年(1275)」銘の板石塔婆(行田市指定文化財)があるほか、鎌倉時代の「吾妻鏡」には「真名板五郎」という当地の地名を冠した武蔵武士の名が見え、その館がこの薬師堂周辺にあったと推測されていることから、この像の造立との関係が考えられています。(埼玉県教育委員会・行田市教育委員会掲示より)

板石塔婆

この板石塔婆は、高さ3.51m、幅87㎝、厚さ13.7㎝の行田市内で最も大きな板石塔婆です。
板石塔婆は、鎌倉時代以降盛んに造られた緑泥片岩等を使った石碑の一種で、一般的には死者の霊を供養するために造立されました。
この板石塔婆は、上部に伊字ノ三点、その下に阿弥陀一尊の種字(キリーク)を荘厳体で刻み、中央の蓮台の上に「南無阿弥陀仏」の銘文、左右に長五輪塔、下部に建治元年(1275)乙亥九月の記年銘と銘文が刻まれています。
銘文の一部がはく落、磨滅していますが、「新編武蔵風土記稿」によれば右側に「右志者奉為過住 主君幽儀滅罪生善」と記されていたようです。左側に「尽法界群類平等 利益仍造立如件」、下部には「沙弥西念敬白」と記されており、沙弥西念が主君の滅罪と法界群類の平等利益を願い建立した板石塔婆であることがわかります。
鎌倉時代の特徴をよく見えた六字名号(南無阿弥陀仏)板石塔婆の典型例と言えます。(行田市教育委員会掲示より)

真名板薬師堂の公孫樹

現在の真名板薬師堂の境内には、江戸時代には新義花蔵院という寺院がありました。しかしながら、明治維新後に花蔵院が廃寺となり、県指定文化財銅造伝薬師如来立像が安置されている薬師堂と楼門だけが残されて、現在に至っています。
その薬師堂の前に東西方向に一列に3本植栽されているこの公孫樹は、西側の2本が雄木、東側の1本が雌木です。樹高はいずれも30m、目通り幹囲は西側からそれぞれ5.6m、5.3m、3.6m、根回りは西端の雄木が最も大きく8.2mを計ります。
樹齢700年とも伝えられている行田市有数の巨木郡です。(行田市教育委員会掲示より)

真名板薬師堂の周辺図


参考資料

  • 新編武蔵風土記稿